電脳けん玉職人

らくがき

村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』

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キツい……

 

新興住宅地の空虚さ、スクールカースト、そして性の衝動がこれでもかと描かれる。このまま読むのをやめて、ゴミ箱に本を捨ててしまおうと何度も思った。ただ、「これは絶対に読まなくてはいけない」という直感に支配された。苦しみながら読み続けるしかなかった。

 

「新興住宅地は『無機質』って馬鹿にされがちだけど、そこにだって物語はある。俺は無機質な新興住宅地で生まれ育った人間として、そこを愛している」と言った建築科の友人がいる。奴は正しい。でも奴の地元は発展を続けている場所だ。

 

発展を止めた新興住宅地の虚しさは言葉にできない。村田沙耶香の描く「しろいろの街」はまさにそれだ。道は無闇に広く、店はチンケなままで、トンネルは開通しない。そして主人公は街を嫌悪する。

 

そんなしろいろの街では、どんな街でも生じるであろうスクールカーストが、これまた同じように生じている。不文律の構造、突然の転落、嘲笑。地獄だ。

その苦しみは、恐らくしろいろの街の特性により増長される。どこにも行けない辛さも大いに作用するだろうし、白という色のもつストレス性も計り知れない。

 

主人公の性への衝動は、一方方向的な所有により達成される。それは街への嫌悪、そしてカーストの無意識的な逆転への欲求が生み出したものだろう。あまりに陳腐な結論だが、その陳腐を徹底的に具現化させた村田の筆力は本当にすごい。この作家と同じ時代を過ごせて、僕は光栄です。

 

2019年12月10日読了