電脳けん玉職人

らくがき

渡辺裕『聴衆の誕生ーーポスト・モダン時代の音楽文化』

まず、やはりこの本は1989年に書かれたんだなということがよくわかった。企業の名前がデカデカと掲げられた冠コンサートや、「特別感」にあふれた存在としてのサントリーホールなどの記述は、古文書を読んでいるようだった。 ただ、解説でも触れられていた通…

マッティ・フットゥネン(菅野浩和訳)『シベリウスーー写真でたどる生涯』

おさらいがてら読んだ。シベリウスをめぐる人々のことが簡潔に書かれていて良かった。 2020年1月11日読了

シェイクスピア(松岡和子訳)『オセロー』

(クラシック好きとしては『オテロ』と表記したいところですが……笑) 畳み掛けるラストを際立たせるために、「オセローが黒人であること」が劇の中盤では意図的に言及されていないのかなと思った。 2020年1月10日読了

金山亮太『サヴォイ・オペラへの招待』

サヴォイ・オペラの説明と、受容におけるナショナリズムや帝国主義について解説。めちゃくちゃ面白かった。 2020年1月9日読了

佐光紀子『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』

エピソード集。調査資料の索引として使えそう。ただ、細かく分析したら「あれっ?」となるところがいくつかありそう。 2020年1月9日読了

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

良い本でした。 正直ショックなところも多かったけど、今こそ読むべき本だと思います。 2020年1月8日読了

シェイクスピア(松岡和子訳)『お気に召すまま』

「喜劇こそ最も悲劇的」だと感じてしまう。アリストテレスもシェイクスピアもチェーホフもまともに読んでない分際で偉そうだけど。 『お気に召すまま』もなんか微妙なモヤモヤが残る。結局のところ、田舎者は田舎者の運命から、馬鹿は馬鹿の運命から逃れられ…

早稲田文学増刊号『「笑い」はどこから来るのか?』

演劇の歴史を概観できたり、澁谷知美さんによるキレッキレの考察(&相変わらずの根気強いリサーチ…)を堪能できたり、差別の実態を突きつけられたりと色々興味深かったけど、やはり断トツで面白かった(あえてカッコを使わずに用いる)のはナイツ塙さんのイ…

松村圭一郎, 中川理, 石井美保編『文化人類学の思考法』

様々なトピックから文化人類学を紹介する本。ちょっとお腹いっぱい。 一つだけ印象に残った章を挙げるとすれば第9章の「戦争と平和」かな。近しい関係をリセットするために戦争が用いられることと、エリート層による動員を指摘されたのち、戦争地域に暮らす…

小林賢太郎『こばなしけんたろう』

コントや漫才および大喜利って、文字起こししても面白いか否かで大別できると思う。前者の笑いについて個人的には「システムの笑い」と呼んでいるのだけど、『こばなしけんたろう』はまさにシステム(だけ?)で押し切ろうとする作品だと感じた。 システムで…

西森聡『そうだったのか、新宿駅』

新宿駅の歴史がわかりやすく解説されていた。巻末の年表をきちんと「読み解ける」だけのリテラシーを身につけないとなあと思った。 2020年1月2日読了

小田中直樹『フランス現代史』

新年1冊目。 「分裂と統合の弁証法」という観点から第二次世界大戦後のフランス史を10年単位で語る本。がっつりヘーゲルに沿っちゃって大丈夫なのかしらんと門外漢ながら思ったけど、普通にいい本だった(というか問題点がわかるほど僕が勉強できてない)。…

中井治郎『パンクする京都ーーオーバーツーリズムと戦う観光都市』

久々に会う親友が最近読んだと言っていたので、大急ぎで入手した。 オーバーツーリズムという単語のもとに、京都の現状と地元民の憂鬱、そして京都表象の歴史が語られる。たしかに問題ではあるのだけど、オーバーツーリズムが排外主義や国粋主義に繋がらない…

恩田陸『六番目の小夜子』

右手を掲げるマジシャンの左手にはタネが仕込まれているように、小説内で提示される様々な要素の裏には何かが潜んでおり、その対応関係は見事だった。そして、左手に仕込まれたタネの鮮やかさに驚くと同時に、右手そのものの美しさにも感嘆してしまった。 20…

シェイクスピア(松岡和子訳)『マクベス』

魔女文化がわかれば、もっと楽しめたかなあと思う。それでもやはり、最終場面の予言の裏切り(?)は圧巻。 2019年12月23日

シェイクスピア(松岡和子訳)『ハムレット』

一気呵成に描ききる筆力には脱帽するけど、ところどころ見られるミソジニーが少しキツい。 2019年12月23日読了

トルストイ(中村白葉訳)『イワンのばか』

頭脳だけに頼りすぎないこと、労働の重要性、そして宗教心を説いた民話集。めちゃくちゃ良い作品だけど、「市民は馬鹿であれ」という暴力に使われたら嫌だなと思った。 2019年12月21日読了

桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

5つの物語からなる短編集。女子校の読書クラブの変遷が描かれる。エピグラム形式なこともあり、絶対元ネタ知ったら楽しい系。 2019年12月20日読了

ベートーヴェン・ツィクルスその3

第3弾はアーベントロートによるエロイカ。もともとあまり得意な曲ではないけど、演奏もちょっとノーサンキューだったかな。 2019年12月20日鑑賞

ベートーヴェン・ツィクルスその2

ベートーヴェン・ツィクルス第2弾。今回はハンス・クナッパーツブッシュが指揮するウィーンフィルによる、1953年の録音を聴いた。 まず「録音悪すぎ!」と思ってしまった。もちろんモノラル方式だし、ムジークフェラインだから録音も難しいんだろうけど、い…

ベートーヴェン・ツィクルスその1

年末だしベートーヴェンの交響曲を聴きなおそうと決意。せっかくだし、毎日一つの交響曲を、それぞれ違う演奏家で聴いてみることにした。 最初は交響曲第1番。演奏はアルトゥーロ・トスカニーニとNBC交響楽団による1939年のもの。 当たり前だけど、The トス…

アガサ・クリスティ(安原和美訳)『オリエント急行殺人事件』

一気読みしてしまった…… 面白かったんだけど、やっぱりある程度リテラシーないとわからないな……と思う箇所がいくつかあった。 2019年12月17日読了

伊藤比呂美『良いおっぱい悪いおっぱい【完全版】』

「胎児はウンコである」「がさつずぼらぐうたら」の言葉により、神話化された母性を解体した様は素晴らしいと思う。でもやっぱり、ジェンダー的に気になる点も少々…… 2019年12月17日読了

プーシキン(池田健太郎訳)『オネーギン』

やっぱり僕は詩が苦手、というか文章そのものを楽しむのが苦手だなと思った。風景描写自体に感心するということがほとんどないので、正直なところ冗長に感じた(決して長い作品ではないのに)。ニュアンスだけでもロシア語についての作用があれば、もっと楽…

三浦良邦『『すばらしい新世界』の二つの社会について 』

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/25753/OLR13-099.pdf とりあえずのあらすじ紹介と、作者のその後を語る。これ論文というより読書ガイドでは…? 2019年12月14日読了

長唄シンポジウム

長唄住吉会の100周年を記念して行われたシンポジウムに参加。 歌川光一さんが「三味線音楽の奇跡と未来ーー「遊芸」から「たしなみ」そして「アイデンティティ」」と題したプレゼンテーションを行ったのち、パネラーの米原さんと高橋さん、および司会の吉住…

オルダス・ハクスリー(大森望訳)『すばらしい新世界』

素晴らしいディストピア小説だった。生産の管理、階級の決定、文化や宗教の否定あたりは「ザ・ディストピア」って要素だなと思うんだけど、「みんなはみんなのもの」というスローガンのもとでフリーセックスが奨励されるのは面白いと感じた。ただ、文明か野…

国立西洋美術館常設展

科学博物館を経て、西洋美術館へ。こちらも同じく無料。ありがたい。 疲れていたので、軽い散歩のつもりで入館。ロダンの彫刻が飾られた入り口では、肉体美とマッチョイズムの連関についてぼーっと考えていた。お次は中世ゾーン。キリスト教の教養がないので…

国立科学博物館常設展(日本館)

日本館の常設展に行った。大学のカードのおかげで金はタダ。サイコーだね。 まず観たのは、常設展の中の企画展(矛盾!)「電子楽器の100年」。梯郁太郎、冨田勲、レオ・テルミンの生涯が紹介されていた。思いのほか小さくて少し残念だったけど、本物のMC-8…

ダグラス・サーク監督『悲しみは空の彼方に (Imitation of Life) 』

「親殺し」の物語であったと思う。同じ屋根の下に住む白人の母娘と黒人の母娘(娘は白人とのハーフ)が、それぞれ子を愛し、親を疎む。その様は原題が示すように、非常に「似ている」。 白人の母ローラは、役者としてスターダムを駆け上がり、売れない時期に…